ハイウエイをおそらくは封鎖して撮影したであろう冒頭は、
映画史に残るレベルのミラクルなミュージカルシーンで、
関心するほかはないし、
エマ・ストーンのアカデミー主演女優賞受賞はさすがに納得の素晴らしさなのですが、
ミュージカルにしてはイマイチ心沸き立つシーンなく、
てゆーか、意外とミュージカルシーン少ないし、
古臭い音楽感に縛られ、常に明日本気出すみたいな言い訳ばかりの負け犬ミュージシャンや、
嫉妬ゆえか、恋人の成功の芽を潰しにかかるクソ女にムカつきを禁じ得ず、
なんかこの映画、ノれないわ〜と、クールに観ていた約2時間でした…
が、
ラスト、5分
その評価全てがひっくり返り、
必死で涙をこらえていた自分がいました。
(ネタバレしたくないので、ここから先もラストの展開についてはあいまいなことしか書いてません)
ある程度の人生経験を経た人間であれば、
誰しもが心に去来するある想い。
それをラスト5分で観客に突きつける。
この苦さ、残酷さ。
この映画は、そのラスト5分に至るために、
例えばその途中のムカつくシーンすらが、
準備されていたのではないか。
ここで警告しておきます。
まかり間違っても若いカップルがデートムービーとしてこの作品を観に行くことなかれ。
なぜか?
本作の監督、デイミアン・チャゼル。
前作の「セッション」では、ラストの鬼畜じみた展開に、
全ての観客が唖然とさせられましたが、
本作では、一見オシャレなミュージカルを装いつつ、
残酷な問いかけをしている。
前述のようにミュージカル映画というにはミュージアルシーンが少ないし、
なにより、主人公がここぞというときに奏でる甘ったるいピアノ曲って、
(彼がなにより大切にしているはずの)ジャズじゃないでしょ。
という具合に、この映画、表面的に語っていることと、
実際に語られているものが実は違うのですよ。
それは意図的だと思う。
観客を騙して喜ぶ、この、監督の底意地の悪さ。
参りました。
個人的にはこの酷さ、好きかも。
ちょっと言いたいことが伝わりにくかったかも知れないのでまとめます。
- 若いカップルがデートムービーとして観に行ってはいけない。宣伝されているような映画ではまったくない。
- ラスト5分が心に刺さる。ここで作品に対する評価が180度ひっくりかえる。
- 監督は心底意地の悪いヤツである。でも嫌いではない。